近所の小さなCDショップに行ったらChageもASKAもニューアルバムが置いてなくて仕方なく池袋のタワレコまで買いに行った僕です。
11月3日に発売されたChageニューアルバム『&C』とASKAニューアルバム『君の知らない君の歌』を聴き比べてみました。
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まずはChage『&C』から
『&C』のCDの帯には、
エッジの効いたバンド・サウンドとChageの
”美メロ体質”が共存した新たな名盤の誕生
と書いてあります。
実は僕は先行シングルの「まわせ大きな地球儀」を聞いてサビのメロディーが好きになれなくて、女性コーラスの歌い方が気に入らなくて、アルバム『&C』もぜんぜん期待していなかったのです。それがまたタイトルチューンでアルバム1曲目である「&C」で一気に引き付けられました。Aメロがビートルズの「While My Guitar Gently Weeps」っぽい感じで自分の好きなところを素直に拾って組み立てている感じがしました。BメロやサビはUKロックやU2的なサウンドにChageメロディーが乗っかって見事に今のChageが表現されていると思います。そんで「&C」が7分22秒と長い。コンサートで冒頭を飾るのか、後半のCoolだけど盛り上げ曲として使われるのか気になります。
そして「&C」はChageが全編作詞作曲している訳ではなく、曲によってはChage本人が作詞をしたり、松井五郎氏や久松史奈氏、既発曲のカバーでは澤地隆氏や廣川翔氏に青木せい子氏の名前も見られる。
作曲に関してはChageを筆頭に西川進氏、村上啓介氏も担当している。中でも村上啓介氏の作る曲やギターは啓介さんのだなとすぐに分かるのも特徴的。
編曲に関しては西川進氏と村上啓介氏を中心に、曲によっては皆川真人氏や戸谷誠氏といった1998年に上海と日本武道館公演でCHAGEソロコンサートに参加した面々も見られる。中でも驚いたのが「永遠の謎」に十川ともじ氏が参加されている事。Chageファンであれば2008年のソロアルバム『アイシテル』に「永遠の謎」が収録されているのを知っていると思う。僕は『&C』に「永遠の謎」が収録されるのが不思議だった。リリースしてから2年しか経っていないのになぜ収録するのか意図が読めなかった。そんな中で十川ともじ氏のブログを見たら全ての謎が書いてあった。
==以下、一部抜粋======
実は今からさかのぼる事13年前に僕も録音していたのだ。
その時メンバーをどうしようかいろいろ悩んで、ベース上田ケンジ(当時の表記ね(^^))ギター西川進 ドラム鈴木英哉(ミスチルのJENです)の最高の布陣で臨んだ。
その曲は正式な曲名もまだなく、しばらく寝かされる事になり13年モノとなったわけ。
今回のアルバムの方向性にはハマると判断された(←それは僕の想像)のかどうかはよくわからないけど~めでたく収録の手はずとなった。
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13年前に録音されていた、ドラムがMr Childrenの鈴木英哉氏、この事からチャゲアスのアルバム『code name 2 sister moon』に収録されなかった曲だと合致しました。確かに『code name 2 sister moon』もしくは『code name 1 brother sun』に「永遠の謎」はあまり合わない曲だなと僕も思います。しかし13年も経ってからリリースされるなんてチャゲアス関連の中ではけっこうレアなケースではないでしょうか。チャゲアスの2004年にリリースされたシングル「36度線 -1995夏-」が本当は1995年ぐらいに制作されていてインスト版が1996年から数年ほどニュースステーションで使われていたという話ぐらいしか知りません。
けっこう『&C』っていろいろな要素が詰まっていますよね。UKロックを基礎に激情的なギターだけでなく繊細なサウンドも作り出す西川進氏、古くはチャゲアスのバックバンドでギターを弾き、Chageと共にMulti Maxを結成して活動していた村上啓介氏との再共演、新しく共演をしたメンバー、古くからチャゲアスやマルチマックスにプログラマーとして参加されていた中山信彦氏、他にもポップス系のレコーディングに引っ張りだこなイメージのある渡辺等氏や美久月千晴氏にMr Childrenの鈴木英哉氏などなど盛り沢山。
デジタル系の綺麗な音も、足踏みオルガンやハーモニカなどアナログでやわらかい音も絶妙なバランスのアルバムになっています。Chageソロのアルバムの中では一番好きかもしれないです。良いアルバムはじっくり聴いても、聴き流しても良いです。
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続いてASKA『君の知らない君の歌』
CDのビニールに貼ってあるステッカーには、
あなたが愛した人、あなたを愛した人
ASKAソングライターズ ヒストリーvol.2
生涯忘れられない人との出会い、別れ、ノスタルジー
ASKAのラブソングで綴るストーリーアルバム
と書いてあります。
ストーリーアルバム、いわゆるコンセプトアルバムの一種ですよね。
Chageソロアルバム『&C』と違って『君の知らない君の歌』は基本的に既発曲で知っている曲ばかりなので全編安心して聴けました。
シングルだとミリオンヒットの「めぐり逢い」を筆頭に、「パラシュートの部屋で」「MIDNIGHT 2 CALL」「C-46」と4曲が収録……って12曲中4曲しかシングル曲が収録されていないってすごくないですか?
セルフカバーアルバムって世間一般的にベストアルバムに近い意味合いがあると思うのです。しかも最近のベストアルバムといえばそれってほとんどシングルコレクションじゃないかってアルバムがほとんどだと思います。そんな中でセルフカバーでありながらもひとつのストーリを形取る選曲で大半が非シングル曲という他のミュージシャンとは違うアピールがすごい。(すいません。多少偏見です。)
そういった偏見、先入観を心に抱きながらCDの再生ボタンを押す。
現代版、ソロバージョンの「めぐり逢い」
京都の平安神宮でのイベントで披露された「めぐり逢い」とだいたい同じ感じです。
平安神宮での演奏を聴いて間もない時に公式サイトの試聴を聴いたのですが、その時はかなり印象が変わって聴こえたのですが、今聴くとだいたい同じ感じです。イベント直後で感覚がおかしかったのかもしれません。良いっす。
10月の平安神宮の夜を思い出しながら2曲目の「好きになる」
『code name 2 sister moon』に収録されているオリジナルバージョンから大好きで、2007年に行われた今のところチャゲアス最後のコンサートツアーで披露されたエレピだけの伴奏で歌う切なく静かなバージョンも大好きでした。もやもやしたオリジナル、切なく静かなバージョンときて、セルフカバーではホーンを淡く添えたポップよりなサウンド。ホーンって切なくもできるし柔らかく幸せなサウンドにもなって素敵な楽器ですね。
そして「パラシュートの部屋で」
この曲は2001年のシングルなんですけど、世間的にもうチャゲアスブームはとっくに終焉をむかえていてあまり売れなかった曲です。でもこの曲のクオリティーはとても高くて好きです。ポルノグラフィティの新藤晴一氏が曲作り(作詞だったかも)でスランプみたいな状態になっていた時に「パラシュートの部屋で」を聴いて20年以上のキャリアで今も新しく良い曲を作り出しているという事に感動し、奮起しシングル曲「ヴォイス」を書き上げたというエピソードがあるのですが、きっとチャゲアスファンぐらいしかそんなの覚えていませんね。はい。
「パラシュートの部屋で」はこれでもかと爽やか路線。そして今回のセルフカバーでは更に爽やか路線。というかモロポップ路線。50歳を越えてこんなポップなアレンジで歌ってしまうASKAすげぇ。さすが個人的人間国宝。
ここまででめぐり会って、好きになって、恋仲になって、次の「B.G.M」という曲で夢のなかへ。「MIDNIGHT 2 CALL」でいつの間にか恋人は別れていて、「明け方の君」ではもうお前よりも好きな女がいてすげー良い女だぜって感じになって、「くぐりぬけて見れば」で現実に戻り、「Far Away」で欝になり、「201号」でやっと諦めて立ち直るかと思ったら「君の好きだった歌」でまだちょっと未練がましく、「no doubt」で思い出を美化しようとし、「C-46」で思い出と共に喪に服す感じです。
これは完全に男目線なストーリーなので、女性ファンは曲単位では共感できても、アルバム単位ではあまり共感ができないかも。でも僕は男なのでめちゃくちゃ分かるわー、それあるわー、みたいな感じです。こんなに良いアルバムとは思わなかったです。ちなみに個人的に最初の3曲以外で特筆する点は、「Far Away」と「201号」です。
「Far Away」は1988年のチャゲアスのアルバム『ENERGY』オリジナルバージョンも好きだったんですけど、完全にオリジナルを越えています。当時の若々しいライブテイクすら大きく超えている存在感なんです。細かいアレンジも好きなんですけど言葉じゃ伝える事がどうしてもできない気がするので是非聴いて欲しいです。そして何よりもASKAのボーカル。全身から振り絞るように突き上げる声は今までのどの作品よりも深く大きく震えるぐらいの存在感。そりゃ30歳前後のASKAの頂上を壊しそうな高音とパワーもすごいけど、50歳を過ぎたASKAの最高のボーカルを聴けるのが「Far Away」だと思う。同じひとだけど全く違う味わいを出す表現者。もう一生ついていきます。
と、ものすごく盛り上がって「201号」へ。
オリジナルは『code name 1 brother sun』に収録されています。
ASKAにしては珍しく作曲を西川進氏と共同で行っています。
アコースティックギターとボーカルだけの曲だったのですが、今回はヴァイオリンに葉加瀬太郎氏、アコースティックギターに押尾コータロー氏をゲストに迎えて、ASKA、葉加瀬太郎、押尾コータローの3人で演奏とリアレンジをされています。今年の8月の情熱大陸のイベントでも披露されていました。これがまたすごく良い。最近ドラマの「モテキ」でオリジナルバージョンが挿入歌として流れたらしいです。
あと「君の好きだった歌」も好きですし、「くぐりぬけて見れば」も好きです。
と、終わらなくなってしまうので今回はこのあたりで。
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Chage『&C』とASKA『君の知らない君の歌』を聴いてみて……
CHAGE and ASKAからChageソロ、ASKAソロでの活動をメインにして同じ日にそれぞれアルバムをリリースされた訳ですが、どちらの作品もこの曲をふたりが一緒にやったら最高だろうなとか思ったりしました。でも『&C』も『君の知らない君の歌』もソロだからできた作品なんですよね。もしかしたらふたりでアルバムを作っていたらこんなに良いアルバムには成らなかったのではないかと思ったりしました。
僕は今でもソロよりもCHAGE and ASKAが最高だと思っています。でもなんか次の作品や更に次の作品でもこれだけの良い作品や更に良い作品がリリースされたらソロが最高に思えてくる日もあるんじゃないかなと少し寂しくなりながら感じました。でもきっとファンがみんなソロが最高とか言い出したらCHAGE and ASKAを再開するんじゃないかなと思ったり。否がある内はソロをやると言っていたぐらいですし。
僕の中でチャゲアスソロ作品史上『&C』と『君の知らない君の歌』は最高の出来だと思いました。そして行々はふたりがソロで最高を感じたらCHAGE and ASKAになってくれるようなそんな妄想に行き着きました。ソロ作品の向こう側にはCHAGE and ASKAを見てしまう僕なんです。
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毎度の事ですがレビューみたいな事を書くとあまりに長くなってしまうので今回こそは短くまとめようと思っていたのですが、また長い文章になってしまいました。それでも最後まで読んで頂いた方、本当にありがとうございます。
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