帰宅中
少しずつ雨風が強まっていくのがわかった
雨風が強くなるのに比例して頭痛も強くなっていった気がした
そんな帰り道
横断歩道の信号が変わるのを待っていた
信号が変わるのを待っていた僕は横断歩道の先で僕と同じように信号が変わるのを待っている女の子を見ていた
やや短めの髪のせいか
古着っぽいトレーナーがそう見えるのかはわからないが少しだけボーイッシュ
しかしとてもかわいらしい雰囲気を持った女の子に見えた
そして信号は変わる
信号が変わると同時に動き出すひとたち
何もかもが決められているかのように歩き出す
すれ違うときに思ったんだ
あぁやっぱりかわいいこだなって
あぁやっぱりかわいいこだなって
そう思いながら横断歩道を渡った
信号を待っていたひとたちの足音を聞きながら
横断歩道を渡った僕はすぐ近くにあるおにぎり屋さんに向かって行った
もう行き慣れたおにぎり屋さんに当たり前のように入る僕
当たり前のようにひとりで入る僕
そんな僕に店員のおばちゃんが
おふたり様ですか?
と聞く
一瞬なにを言っているのだろうと思ったらかすかに背中にひとの気配がした
誰かがたまたま同じタイミングでお店に入ってきたのだろうと思い
ひとりです
と答えた
行き慣れたおにぎり屋さんにひとりで入りひとりで椅子に座った
カウンターの中にはいつものかわいらしい中国人の女の子が居た
そして背中に気配を感じていたひとも椅子に座ったようだ
気配を感じさせずに僕の後ろにいたひとはどんなひとだろう
そう思って顔を見た
興味本位で顔を見た
さっき横断歩道で信号が変わるのを待っていた女の子だった
さっき横断歩道ですれ違ったはずの女の子だった
さっきあぁやっぱりかわいいこだなって思った女の子だった
行き慣れたおにぎり屋さんで慣れないことがあった
驚かなかったというわけではない
動揺しなかったというわけではない
すれ違ったはずのかわいい女の子がそこに居る
ただただ行き慣れたおにぎり屋さんでいつも通りおにぎりを注文して食べた
時折さっきすれ違ったばかりの女の子を見ながらおにぎりを食べた
ほぼ同時に食べ終わった女の子は先にお店を出て行った
ほんの数秒遅れてお店を出た僕はふと周りを見渡した
見渡した先には強くなった雨風と水たまりをはじきながら走る車だけだった
彼女の足音が聞こえたのはすれ違った横断歩道だけだった
本当は誰も居なかった
そう思えてきた
[0回]